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   10YEARS AGO
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「・・・・・・なあ」
ジュリアンが、唐突に話掛けてきた。
「何?ジュリアン」
シンビオスが、ティーサーバーに紅茶を入れながら応える。
なんとなく食堂に行ったら、偶然鉢合わせになった。
紅茶でも飲む?とシンビオスが聞いたが、ジュリアンは何も応えない。それを肯定と判断して、紅茶の用意をしていたら、今の言葉が出てきた。
「お前さあ・・・昔、何やってた?」
「・・・・・・え?なにやってたって・・・どういう事?」
シンビオスが首を傾げる。質問の意味が、よく分からない。
「んー・・・昔、何があったーとか、そーゆー事」
「昔あった事・・・・・・えー・・・・・・?」
少し考えたが、その答えが出る前に別の質問が浮かんだ。
「なんで、そんな事聞くの?」
「んー・・・ま、いろいろ」
「・・・いろいろってどういう事なの?それじゃ分かんないよ」
シンビオスが、少し苛々しながら訊ねる。その間に、止めていた手を動かす。湯を入れたら、真っ白い湯気が出てきて、少し鬱陶しい感じがした。
「いちいちんな事こと聞くなって。ホンットに神経質なんだからよー、どこぞのお坊ちゃんは」
「神経質で悪かったね。まったくの無神経よりは、遥かにマシだと思うけど?」
ジュリアンの皮肉を軽く返す。
・・・・・・まったくもう。
そう思いながら、シンビオスは蒸らしている紅茶のポットをじっと見る。
「あ、俺ストレートね」
「はいはい。・・・・・・で、さっきの続き。なんでそんな事聞くの?」
シンビオスが、先程の質問をまた繰り返す。
・・・・・・本当に、何でも逸らかそうとするんだから。
「んー・・・・・・何か気になったから」
ジュリアンは、見るからにやる気が無さそうに応える。面倒なので口には出さないが、『お前、ホンットーに細けーな』とつくづく思う。
ふと見回してみると、シンビオスが訝しげにこちらを見ている。
・・・・・・あ、やっぱ気付いた?
「ふーん・・・。・・・・・・んー、別に特別な事はなかったけど」
ジュリアンをある意味で見つめながら、シンビオスは軽く上を向く。何かを考える時の、彼の癖だ。
・・・・・・細かくて悪かったね。ムシンケー傭兵クン?
「あっそ。つまんねーの」
ジュリアンは、言葉の通りに顔を顰める。
「つまんなくて悪かったね。そーゆー君はどーなのさ」
「えー・・・俺?俺はー・・・・・・」
彼は、軽く迷った様な素振りを見せた。
・・・・・・まったくもう。
「自分で直ぐに応えが出せないんなら、こっちに質問しないでよ」
「えー?いーじゃんかよ、別に」
悪びれた様子も無く、彼は軽く言う。
その様子に、シンビオスは段々と呆れてきた。
「・・・ま、いーけどね。で、君はどーだったのさ」
「何が?」
今のジュリアンの言葉で、心の底からシンビオスは呆れ返った。
「・・・・・・帰る。紅茶、勝手にやって」
そう言って、スタスタと出口に向かう。
・・・・・・えーかげんにせぇ。あ、ちょっと言葉づかい変になってる。
「ジョーダンだっての。ま、そーカッカしなさんなって」
本当に出口に向かってしまっているシンビオスを、ジュリアンは軽く宥める。
「・・・・・・付き合ってらんない。マジで」
「いーからいーから。ほら、紅茶ももうそろそろなんじゃねーのか?」
「・・・・・・分かったよ」
ジュリアンは、なんとかシンビオスを宥める事に成功した。
「で、ジュリアンは昔、何かあったの?」
シンビオスは、(もうそろそろ良いかな・・・)と思い、紅茶をカップに注いだ。
「あー・・・・・・そういえば」
「そういえば?」
「思い出すなー・・・・・昔」
・・・・・・とっとと吐け、アホ毛傭兵。あ、言葉づかい汚い。
「昔・・・・・・何?とっとと言ってよ」
シンビオスはまたしても苛々してきた。
・・・・・・流されるなぁ。どーしても。
そう思いながら、自分の紅茶のカップに砂糖とミルクを入れた。
「こけしだった頃。」

・・・・・・間・・・・・・

周りの温度が10度程下がった気がした。10度も下がられると、暖房設備の意味が無くなってしまうように思える。
なんとか立ち直ったシンビオスは、無言でジュリアンの側に近寄って行った。ジュリアンは、何故だか良く分からないが、思い出に浸っているようである。
そしてシンビオスは、ジュリアンの背後(バック)を取った。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
ばしゃ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
もう一度、ばしゃ。

・・・・・・間・・・・・・

「うあっちーいぃぃぃーーー!!!!!ギャー!!死ぬー!!!!」
「自業自得。」
シンビオスは、きっぱりと言いのけた。
「何すんじゃぁー!!!いきなり紅茶うあちぃぃーー!!!!」
「何いってんのか分かんない」
はっきり、きっぱりと。彼のこめかみには、ぴくぴくと青筋が走っている。
「大丈夫。ギャグだから死なない」
「ンな問題ギャァーーーッ!!!!」
ばた。
少し大袈裟な音を立てて、ジュリアンは倒れた。
「・・・・・・あ、死んだ?」
シンビオスは、誠にあっさりと言い放った。
「さっきも言ったけど、自業自得なんだからね(はぁと)」
そうして彼は、また新たな紅茶を自分の為に入れたのであった。

お・わ・り☆

「・・・・・・おい」
「何?」
「・・・・・・あんだけかよ」
「何が?」
「バックレんな」
「だから何?」
「・・・・・・もういい」
「あっそ」
「・・・何であんな怒ったんだ?」
「・・・パクリは嫌いだから。」
「そんだけじゃねーだろ」
「ちったーマジメに応えろファザコン男。」
「ファザコンゆーなシスコン。」
「黙れ。」
「てめーこそ黙れ。」
「っつーか包帯グルグル巻きすんな。見てるこっちがヤんなってくる」
「てめーがやったんだろコルァー!!!」
「・・・・・・パクンな。それ以上やったらマジ殺す。っつーか原因作ったのは貴様だ」
「だからって入れたばっかの紅茶ぶっ掛けんのはねーだろ!?」
「だから黙れ。」
「黙ってられるかっての!!!!」
(以下省略・・・・・・)

お・わ・り☆
っつーか、終わっとけ。






<覚え書き>
ゆーき様作第4段
タイトルだけを見たらシリアスかなあ・・・と思ったのですが、ぶっ壊れ状態のジュリー満載(笑)10年前のジュリーは確かガルムの仇討ちの旅に出たはずじゃ・・・(以下略)
シンちゃんも壊れ気味(というか完全にキレてますね)で、好みによっては賛否両論の口調ですが、よく思い出してみたら必殺技の台詞は「なめるな!」とか、「お前の負けだ!!」とか、結構勇ましかったりしますのでこんなのも大アリだと思います。
2001年5月4日編集