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 ⇒ 始めに

以下の文章は半ノンフィクションであり、出てくるキャラはゲーム上で実在します。
よって、キャラの所有者の削除要望があったら即記事の削除するものとします。
予めご了承ください。
自己満足の為に書いたものなので、ほとんど当事者にしかわからない仕上がりです。

なお、キャラの性格は当方がゲーム本編に乗っ取って、勝手に想像&捏造したものです。
実際の整合性を問わないようお願い申し上げます。

●人物略説(捏造)●
ジュウベエ:とある相手と能力の限界値(レベル上げのこと)を競っていた。誰もが認める最強の侍。
        毒舌家だが彼を慕うものは多い。隻眼。
エリーゼ:最強のヒュードルとなるべく、日々戦いに明け暮れる。その性格はクールで惨忍。
       人との馴れ合いを嫌い、滅多に人前にその姿を現さない。
       不老不死。しかしその体内構造が彼女の精神を歪めてしまったのかも知れない。
       ジュウベエとはかなり奇跡的に係わり合いを持つようになった。

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-++サヨナラなんか言わない++-

「お主がLv131になったら渡したいものがある」
目の前に立つ侍は含み笑いをした。

そう私に言ったのは隻眼の侍、ジュウベエ。
すでにその強さは私のソレのはるか上、最強の侍。

「拙者には目指しているものがある。勝たねばならない相手がいる」
そんな彼が目指しているもの・・・

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  中略(詳しい設定までは頭がまわらないので割愛)
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しかし、Lv131で装備できる防具など、一体何があったのだろう?
「ふ…」
他人と馴れ合わない主義の私と、それに反してごくわずかな期待が入り混じり、吐息となって洩れ出た。


+++


人知れず、ラグオルを駆け巡る日々。
最強のヒュードルを目指して、ただひたすら目の前の敵を無表情で倒していく。
着実に力は付き、とうとうLv131になった。

『Lv131』
そう、その数字はあの侍が私に言い渡した数字だった。
一体何があるのだろうか?
いや、そもそもあの侍と近いうちに再会することがあるというのだろうか?

一期一会。ラグオルではこの熟語が日常。
星の数ほどの出会いがあり、その出会いはハンターズ一人一人にラグオルで平等に与えられる。
しかし、また共に戦うことができる仲間はほんの一握りに過ぎない。

あの圧倒的な強さを誇る侍ともう一度会えるという保証なんて、ただの一分とないのだ。

初めて興味を惹かれた無敵の侍。できればもう一度、だなんて。
そこまで考えて、思考を止めた。

「くだらない。」

自分で自分を一蹴し、目の前のバートルを一閃した――


+++


再会は思っていた以上に早かった。
「久しぶりだな。」
後ろから声をかけられ、振り返ると確かにあの侍だった。
「あら、それほど時間は過ぎていなくてよ。」
必要以上にそっけなく返す自分。
「ふ・・・元気そうで何よりだ。」
苦笑交じりのその声がひどく懐かしく響いたのは何故だろう?
「強くなったな。発するオーラが以前会った時とはまるで違う。少々負寄りのエネルギーだがな。」
以前に比べて禍々しくなった自分のそれを同じく苦笑交じりに指摘し、彼は少し目を細めた。
…違う。以前の彼に感じた、鋭さが感じられない。
「一体どういうつもり?あなた…まるで人が違う。やけに腑抜けになったものね。」
少々きつめの毒を吐いてみる。
不機嫌になるかと思っていたが表情は変わらず、それどころか、ますます優しげな…というより、困ったような顔をした。
「ふ・・・やはり隠せるものでもないか。」
口の端で笑って、そして更に言葉を続けた。
「拙者は今日をもってここを去る。永遠にな。」

『え…?』

一瞬絶句したが、次の瞬間、私はその言葉の意味を悟った。

「相手が、限界に達したのね。」
「ビンゴ。」
相変わらず彼は口の端で笑って肯定した。
「っ!」
私が何かを言おうとしたその刹那を縫って先に彼が発言した。
「ともかく、以前の約束だ。シティに下りよう。来い。」


+++


転送機からシティに送られ、一言も言葉を交わすことなくただ黙ってチェックルーム前まで走る。
そしてジュウベエは今まで自分が愛用してきたであろう、武器や防具を私の前に並べた。

「受け取ってくれるよな?」
ごく低い声で私に伺いを立ててくるその侍は、まるで別人のように穏やかな顔つきをしていた。
私以上の、あれほどの殺気をギラつかせていた同一人物とは到底思えない。

「何故…」
自分でもどこから出ているのかわからないくらい低い声を発す。
「ん…。」
「何故、そんなに。」
「ああ、あっさりしているのかって言うのだな?」
自分が言おうとした言葉を先回りして、そう彼が言う。
「さあな……実のところ、拙者もわからん。」
少しおどけたような口調で言葉を繋ぐ。
「拙者にとって…有利とは言えない状態で勝負して、それでも勝とうとした。しかし、負けてしまった。」
「だったら!」
普段の自分では想像できないような声高のトーンがやけに耳に響く。それでも構わずに続けた。
「だったら…別に今リタイアする必要なんてない筈よ。あなた、あと少しで限界に達するじゃない?せめてそれまではっ…!」
「エリーゼ。」
急に今まで呼ばれたことの無い名前を呼ばれて驚いた私は発言を止めてしまい、代わりに彼の、これまで聞いた事のない重い声が私に伝わった。
「拙者にとって、限界に達することには全く意味がない。競争相手に追いつき抜き去ること…それが拙者にとってすべてだったのだ。」
「……。」
言葉が、出なかった。
そう、彼はそう言い続けてきた。
相手より先に未知の能力値になること。それが彼の目指したモノだった。
「相手は、あなたが勝負を挑んでいることは知っていたの?」
「ああ。」
「相手は、もしあなたが負けたら、ラグオルを去ることを知っているの?」
「ああ。」
「…そう。」
「拙者が・・・拙者が使っていた番傘はその相手に譲ってきた。」
「…。」
「大事にしてくれると言ってくれた。」
「…。」
「それで、十分だ。」
そう言葉を紡ぐ彼の顔は晴れ晴れとしていた。ラグオルに毎日昇る朝日のような…。

「何か…うまく言葉が出てこないわ。」
ポツリと、やっと呟いた言葉がコレ。
冷徹、残虐と言われ、絶対零度まで凍てついたはずの自分の中で、何かがツゥーっとすべっていくようなモノがあった。
「もう少し、時間があったらよかったのにね。」
「ああ。」
「そうしたら、もう少しここに…ラグオルにいることができたのにね。」
「そうだな。」
彼には、今の自分の表情が、どんな風に映っているのだろう?自分でも情けない顔をしているだろうと、自覚していた。
「言っておくが、何も死ぬわけではないからな。ただケジメをつける為に…暫くココを離れる必要があるだけだ。納得がいったらそのうちひょっこり戻ってくるかもな。」
先程見せたおどけた表情で、極めて明るくそう言った。

「さて、話が過ぎたようだ。」
「ふ…そうね。」
やってきてしまった別れの時。
「今まで…ありがとう。」
『えっ?』
「ありがとう。」
面食らっている自分を他所に、再び「ありがとう」を繰り返す彼。
『何、それ。』
自分の奥底で封印していた感情が突然溢れ出した。
『ありがとうって…あなたは私に多くを与えてくれたけど、私はあなたに何一つ与えたものなんて無いわ!!
なのにどうして感謝されなくてはならないの!?』
フルボリュームにして叫びたい叫びは、未遂に終わった。どうしても声が出なかった。喉が焼けるように痛い。頭の中がどうしようもないくらい、真っ白だった。
――今にも嗚咽が漏れ出しそうで。
『行かなくてもいいじゃない』
この一言は声に出せそうだった。
でも、これは禁句だと本能で悟り、何とか思い止まる。彼が決めた決着であって、自分が口出しできることではない。
それに、止めた所で彼の決心が変わるわけでは、ない。
「それでは。」
去ろうとする彼に、やっと一言を振り絞る。
「じゃあ、「また」逢いましょ?」
絶対別れの言葉なんて言わない。「サヨナラ」なんて言葉を軽々しく言わない。それが、今私ができる精一杯の強がり。
「ああ…「また」な。」
彼もそう、同じように返してくれた。

そして、「彼」はラグオルを去った。

私は残されたアイテムを、手にとって確認するわけでもなくいつまでもぼんやり見つめていた――


+++


1人のハンターが去ったところで、ラグオルが変わるわけでもなく、私の日々も変わるわけではない。
ただ強さを求めて今日もこのラグオルの大地に下り立つ。

誰と馴れ合うわけでもなく、たった独り生きていく。

ただ。

今の私の左腕には、私が唯一畏怖し、時間を共有できた者の「想い」が備わっている。
私の凍てつかせた心を一瞬でも溶かしたのは、後にも先にも彼だけ。
そしてそれは、これから先、誰から問われようとも、決して口外することのない、墓場まで持っていく秘密。

カザミノコテ。

あの男の魂と共に、私は今日も生きていく。


いつかやってくるかもしれない再会の日を、当面の生きる糧として。


〜ひたすら走り続け生き急いだ或る男と、たった独り悠久の時間を過ごさねばならない運命に或る女の、闇に消えた物語〜




END(永遠に未完)
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