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   キセキな出会い
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3.

慎重に歩を進める二人。実は、過去に一度お忍びでアスピアに行った際にもこの2人は空巣退治をしている。
この時も同じようなシチュエーションで扉が開き、興味半分で中に入ってみると泥棒がいたのである。そしてとっ捕まえてアスピアの警備隊に引き渡したのだった。
内緒にしておくつもりだったが有名人2人のことである、2人がフラガルトへ帰ってきた頃には町じゅうに広まり、その武勇伝(?)はコムラードの耳にもしっかり入っていた。誉められ半分、他人の家に無断で侵入するとは言語道断だと説教を食らった思い出がある。
しかしここサラバントでは2人の知名度も皆無だし、まず国王達の耳にも入らないだろうと考えた。







次第にシンビオスの耳にもダンタレスの言う妙音がはっきりと聞き取れるようになっていた。
「確かに人の足音ではないようだな。」
声を押し殺してシンビオスはそうダンタレスに告げた。
「・・・どうやらこの奥の部屋のようです。」
玄関から居間を通り、台所へ通じる入り口を確認して、ダンタレスは確信をもって言った。扉はない。ここまで来ると妙音は正体を変えてはっきりと聞こえた。今やダンタレスが最初に形容した、「トーン」というような擬音ではなく、どう聞いても「ぽよーん」か「ぽよ」、なのである。2人は眉間にしわを寄せて顔を見合わせる。
「このような音、聞いたことありますか?」
「ダンタレスでもないのに僕にあるはずないだろう。」
「そうですね。行きますか?」
入り口の壁にへばり付き、入り口を挟んで最後の打ち合わせ。姿を見られる可能性を考慮して中の様子は窺わないでいきなり突入という形をとる。
「まあ・・・空巣とは考えられないんだけど・・・。まず僕が入る。僕が注意を惹きつけるから続いて入って他の入り口を塞いでくれ。いいね?」
「承知いたしました。」
二人して頷いた。
「いくよ・・・1、2の・・・。」
「3!!」
2人同時に叫んで中に飛び込んだ!・・・まではよかった。

2番目に入ったダンタレス・・・と言っても、入ったタイミングはシンビオスとほぼ同時で、彼は窓の位置を瞬時で判断しほぼ一跳躍で目的地にたどり着いた。そして瞬く間に振り返ると、絶句した。

『なっ・・・。』







一方、シンビオスはと言うと・・・
飛び込んだ直後に目の前がオレンジと白のしましま模様がいっぱいに広がり、それらに完全に支配され、そのまま変な感触で跳ね飛ばされ、結果、

ドタンッ!!

思いっきり盛大に後ろへ倒れこんだ。
『なんだ!?今の??』
すぐさま冷静に考えたが、声が出なかった。
本人達には長い時間のように感じられたが正確な静寂の時間はわずか3,7秒。
「いて・・・ててて??」
「し、シンビオス様!!」
シンビオスの呻き声とダンタレスの叫び声はほぼ同時だった。
ダンタレスは本来の目的などすっかり忘れて倒れた(と、言うよりすっころんだ)シンビオスのところに駆け寄った。
「大丈夫ですか!?お怪我は!!」
「あ・・・う・・・こ、後頭部に・・・。」
「後頭部に!?」
「コブが約1個できそうな、予感・・。」
「シ・・・シンビオス様!?」
「うーん、でも、おかしいなあ・・・。」
意外に冷静さを取り戻すのが早いのは被害がコブ1個で済みそうだからである。
「前から何かが飛んできたわけだから、前にも何か衝撃が残っていてもおかしくないはずなんだけど・・・。」
頭をさすりさすり考えていたそのときである、どこか申し訳のなさそうな声で自らの存在を示したのは。
「キュイーン・・・。」
2人が同時にその方向を見やる。

そして再び絶句した。


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2000年11月2日完成